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モノづくりの未来を考える
(株)LIGHTz 代表取締役CEO 乙部信吾さん×東京貿易ホールディングス(株)代表取締役社長 坪内秀介 対談(後編)

2024年4月、東京貿易ホールディングス株式会社は株式会社LIGHTzと戦略的資本提携契約を締結しました。

東京貿易ホールディングス株式会社 株式会社LIGHTzとの資本業務提携について | 東京貿易ホールディングス株式会社のプレスリリース (prtimes.jp)

今回はLIGHTz代表取締役CEOであられる乙部信吾さんと弊社代表取締役社長 坪内秀介との対談の後編をお届けします。

(前編はこちら https://palette.tokyo-boeki.co.jp/2024/07/09/917/

(前編から)

坪内さん:え、そうなのですか?(笑)では最初、BEEの製造部門のデューデリジェンスの依頼を受けてくれたのはどういうお気持ちだったのですか?

 

乙部さん:まずBEEさんの製造現場はとてもユニークだと感じました。そしてこの会社を仲間に迎え入れようとしている、東京貿易グループとはなんて魅力的な企業なんだと思いました。
というのも、BEEさんは日本とインドネシアに製造拠点があるのですが、従業員の数は圧倒的にインドネシアの方が多いのです。製造業は作る量によって作業員の熟練度が上がるので、日本とインドネシアには技術の熟練度に差がありました。
それをもう一度、事業として立て直し、改善していき、日本・インドネシアという製造圏をさらに世界に広げていくという大仕事に挑まれるわけですから、ぜひお力になりたいとワクワクしました。

 

坪内さん:そのような視点で見てくださってありがとうございます。実際インドネシアにも行って、現地の製造の強みと課題を深く分析していただき、さらに丁寧にわかりやすく説明していただいて、私も大変助かりました。現地でLIGHTzさんの働いておられる姿を見て思ったのですが、やはり熟練工さんや職人さんから話を聞きだすのって難しいことではありませんか?

乙部さん:大前提として、受け入れてもらえないものだと思って覚悟していきます。私たちがどんなに知識を叩き込んでいっても、日々その現場に携わっている人たちにはかなわない。その人達以上に詳しくなることはできない。それでも、自分たちなりに仮説を作って、その考えをぶつけてみて、謙虚な態度で教えていただく、その中で私たちが何かお役にたてるのではないか、お役に立ちたいという熱意で臨んでいます。

坪内さん:私にも覚えがあります。私は営業でしたが、よい製品を作るのに製造現場の職人さんと話し合うことがありました。「自分は何も知らないので教えていただきたい」という謙虚さと一緒にいいものを作りたいという熱意をお伝えしなければ信頼関係は生まれませんよね。LIGHTzさんのような最新AI技術を扱うコンサルタントでもそうなのですね。

 

乙部さん:全くその通りです。だからこそ、まず最初にその現場を「好き」と感じることが大事になってきます。私たちのミッションのひとつに製造業の技術継承に貢献することが上げられます。
製造業も高齢化、人手不足に直面していて、今の職人さんの技術を継承していくことは急務なのですが、職人さんが寡黙だったり、説明が感覚的だったりする傾向がありなかなか継承は容易ではありません。
職人さんの持つ感覚やセンスは数字はもちろんですが、他にもあいまいな言葉で発せられたり、映像だったり、音だったりと多様なデータで構成されます。通常のAIではそれらを一気に扱えません。そこで私たちはそういう多様なデータを統合して扱うことのできるAIを開発したのです。(「1+あ」ができると表現しています。異なるデータの体系化)。
職人さんと根気よくヒアリングを重ねていくことで、彼らの尊い技術のエッセンスに迫り、それらのデータを統合し、モデルを作ることができる。それが私たちの強みだ、と思っています。

 

坪内さん:素晴らしいことですね。製造業の技術継承問題は私も痛感しています。中小企業で素晴らしい技術をもっているのに、後継者がいないから廃業するという話もよく聞きます。そういう貴重な技術のバトンを次世代に渡すことができたら、それはとても大きな社会貢献ですよね。乙部さんが、こういうベンチャーを思いつくだけにとどまらず、実際に立ち上げることができたのはなぜですか?

乙部さん:アイデアを思いつくというのはよくあることだと思うのです。でも自分一人の力ではできないことを思いつくことが多いのです。その時に大事なのは一緒にやってくれるチームとか、仲間、または自分よりもっと大きなボリュームを持つ人にわかっていただくことです。自分と相対するものや人に囲まれて、その中でバランスをとることができたら物事って成就するのではないかと思います。
そう思うようになったのはいろいろなアイデアを思いつくけど自分一人では出来ないことが多い。じゃあ仲間と一緒にやるとしたらどんなモデルになるかな、と常に周りの在り方を考えるようになって、熱意だけで突っ走らず、 1 回ちょっと落ち着かせるとうまくいくということが体験として積みあがってきたからなのです。
それと、坪内さんをはじめ経営者の先輩とお話しする機会が多いのですが、経営や経済のサイクルを一巡されている。
会社におけるエコノミクスを一周回したご経験を伺って自分のアイデアをそれと照らし合わせると、事業として実現するにあとどれくらいのことが必要なのかがわかります。自分のアイデアに対して熱意を持てばもつほど、実現したければ実現したいほど他者性を持ち込んで、対話しながら考えていくことを私は一番大事にしています。

 

坪内さん:達観されていると感じますし、いい考えですね。自分ですべてをやろうとするのではなく、他者の視点を入れたり、仲間が集まってくる中で彼らとやっていくためにはどういうビジネスモデルがいいのか。それは顧客視点とはまた違った視点ですが、仲間すら巻きこむことができなければベンチャーの立ち上げは乗り越えられないということなのですね。すごく刺激的なお話です。
新事業の開発は東京貿易グループでも2024年度からスタートした中期経営改革でも大きなトピックのひとつです。一人ではなく、その事業の目的に共鳴して一緒にやってくれる仲間の存在が大事というのは多いに同意するところです。
東京貿易グループは商社グループになることをうたっていますが、グループ内には製造に携わっている人もいるし、商社よりの人もいるし。
多種多様な価値観が存在していて、顧客の価値を最大化するのにメーカーだからとか、商社だからとか枠に縛られない環境にあると思っています。社内でもそういう仲間を集めやすい環境なんじゃないかなあ。

 

乙部さん:私もそう思います。「あ、それいいですよね」と興味のある人が集まって、「そうですよね」って回り始める。実際にアイデアを実現するために、他の会社の人とつながっていくこともできる。若い人たちがそういうコミュニケーションを取り始めると一気に面白い方向に行くような気がしますね。

 

坪内さん:東京貿易グループでは経営理念として『持続的な社会の発展に貢献すること』と掲げているのですが、事業を作るときに大事になってくるのは、「思い」だと思うのです。儲かるのは大事なのだけど、それだけでは続かない。どれくらい社会課題を解決して世の中に貢献したか、という視点がないとダメですよね。
でも社会への価値と経済的価値って本来別物で、この2つを結びつけるのがイノベーションだと私は考えています。そのイノベーションを枠に縛られず引き起こしていく、そういう環境を会社として整えて、社会に大きく貢献していく、そしてその結果、社員の物心両面での幸せを実現するのが、我々が目指す姿だと思っています。

 

乙部さん:大変勉強になります。社員が、会社の掲げる理念に共鳴しているかどうかが重要ということですよね。 私も採用の時にはその人の持っているスキルや経験はもちろんですが、「汎知化、ブレインモデル」 というLIGHTzのコアコンピタンスの力を信じ、これまでにできなかった大きな挑戦をする、という理念に共鳴してくれているかを重視します。
また、会社のダイナミクスを考えながら将来を見据えて経営していという部分は、私も坪内さんから教えていただきたいところです。東京貿易グループは現在グループ会社が16社、従業員数が1300人を超えると伺いました。その中心で経営されるというのはどういう感覚ですか?

 

坪内さん:一般的に上司1人で抱えられる社員数の上限は 50 人と言われていますが、それは本当だなと感じたことがあります。昔は自分が5人いると、全部うまく回せるのにと思っていましたが、そんなことはできるはずもないので、そこは考え方ややり方を大きく変えていかないと、次の100人、1000人のステージにはいけないですよね。

 

乙部さん:うちの会社は今70人ほどです。今は組織もフラットで権限移譲をどうするかなんて和気あいあいとやっていますが、これから規模も大きくなっていくことを視野にいれていろんなことを考えて経営していかなければなりません。

坪内さん:なるほど、それは大変ですけど、楽しみですね。楽しみというのは、自分は「何のために生まれてきたのか」が問われる挑戦じゃないですか? 楽な時間を過ごすために生まれたのではないと思うんです。私にとっては、私の経営で社員から「いい会社になりましたね」って言ってもらえるのが自分へのご褒美だと思っているので、それに向かって邁進したいと思います。

 

乙部さん:御社の製造部門における、理解や知識をこれからもお届けしたいと思いますし、今後のグループ戦略の実現のために坪内さんの経営にお役に立てるように私も頑張ります。経営の先輩としても、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。

 

坪内さん:こちらこそ!お願いいたします。

広報部から

対談終了後も経営者同士、分かり合えるトピックは尽きない様子のお二人。

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