高校生と一緒に考える技術開発のおもしろさ!
~大学受験のアドバイスも?~
東京貿易ホールディングス株式会社は、2024年1月18日、国立大学法人 山口大学 大学研究推進機構 知的財産センターおよび、知財創造教育地域コンソーシアム(中国地域)が主催した『第五回全国知財創造実践甲子園2024』を協賛しました。
【全国知財創造実践甲子園とは】
現在IoT や AI、ビッグデータの活用によるデジタル革新が進展し、Society 5.0に向けた、新しい学力観での教育が進む中、高校生がPBL(プロジェクトベースドラーニング)等で商品やビジネスモデルを生み出し、実践的に学ぶケースが増えています。
その中には、知的財産の創造・保護・活用が含まれますが、それが十分に意識されていない場合も多々あるのが実情です。『全国知財創造実践甲子園』はこれら課題の解決を目指し、参加する学生に、自身の実践を知的財産の視点で見つめ直し、発表や共有で学び合い、新たな創発の機会を提供しています。また第5回から内閣府 知的財産戦略推進事務局の後援のもと、より一層充実した発表会が開催されました。東京貿易グループは次世代育成の理念に共鳴し、第3回大会より、最初の協賛企業として大会に賛同しています。
この大会において、山口県立 山口松風館高等学校 2年生 山根 康輔さんが驚きの発明品で『最優秀賞』および『東京貿易ホールディングス賞』を受賞されました。今回は山根さんと東京貿易のグループ会社の一つ、東京貿易テクノシステム(株)(以下TTS)で新技術の開発にとりくんでいる川本さんとの対談をお届けします。技術が大好きなお二人の対談、どんな話題が飛び出すのでしょうか?それではどうぞ。
この記事でわかること
・東京貿易グループの次世代支援 全国知財創造実践甲子園
・最優秀賞と東京貿易ホールディングス賞受賞の山根さんの考える技術開発の面白さ
・TTS川本さんの考える企業における技術開発の面白さ
・大学の選び方。将来の進路
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PROFILE
山根康輔さん Kosuke Yamane やまね こうすけさん
2007年11月生まれ、趣味はロードバイク、スノボー、カメラ、動画編集と多趣味。
小学校の頃からものづくりが好きで、プログラミング教室に通い始める。
中学3年生の時に「オムクロタイヤ」を製作し、第81回全日本学生児童発明くふう展にて最優秀賞である「恩賜記念賞」を受賞。この「オムクロタイヤ」は商標登録済、実用新案取得済。
その翌年、「スクリュータイヤ」を製作し、第82回全日本学生児童発明くふう展にて「経済産業大臣賞」を受賞、そして台湾で開催された世界大会「IEYI2024」にて、4つの賞を受賞。 -
PROFILE
川本貴志さん Takashi Kawamoto かわもと たかしさん
東京貿易テクノシステム株式会社
営業企画部 先行開発チーム
2012年4月新卒入社。技術部門で製品開発を担当した後、2020年より基礎研究に従事し、2024年度からは大学との共同研究も行う。公益社団法人 日本設計工学会 2023年度秋季大会では「物理エンジンを用いた眼鏡着装シミュレーション」で優秀発表賞を受賞。 現在はX線CTの研究にも取り組み、TTS公式YouTubeの配信も担当する。
目次
・全国知財創造実践甲子園 東京貿易ホールディングス賞 受賞者 山根康輔さんの発明
・山根さんの考える技術開発の面白さ
・TTS川本さんの考える企業における技術開発の面白さ
・大学の選び方。将来の進路
・広報部より:取材を終えて
全国知財創造実践甲子園 東京貿易ホールディングス賞 受賞者 山根康輔さんの発明
川本さん:山根さん、最優秀賞と東京貿易ホールディングス賞のダブル受賞、おめでとうございます。
山根さん:ありがとうございます。
川本さん:私も応募作品の動画をとても楽しく拝見しました。改めて応募作品について説明してもらえますか? https://youtu.be/NtaQqiKtvpQ
山根さん:はい。大会には2つの発明品で応募しまして、1つがオムクロタイヤ、もう一つがスクリュータイヤです。オムクロタイヤはクローラーとオムニホイールという特殊車輪を掛け合わせた完全オリジナルな発明で、実用新案も取得、さらに「オムクロタイヤ」という名前で商標登録も取ってあります。動画を見ていただけるとわかりやすいと思うのですが、クローラーの部品一つ一つの進行方向直角になるように小さい車輪を埋め込んでいます。そのためクローラーが平行移動できるのでいろんな場面で活用が期待できると考えていて、応募動画ではレスキューロボットや、介護用の車椅子への装着を提案しました。
もう一つが、スクリュータイヤなのですが、スクリューの機構とメカナムホイールという、これも特殊車輪なんですが、その二つを掛け合わせた完全オリジナルなロボットです。水陸両用360度動けるし、さらに水上から陸上に入るとき、陸上から水上に上がる時にタイヤを交換することなくそのまま移動できるというロボットです。水上レスキューなどへの応用が考えられるのではないかを思います。
川本さん:発明の時期は、オムクロタイヤのほうが先なんですよね?
山根さん:はいそうです。オムクロタイヤは2年前、僕が中学3年生の時。全日本学生児童発明工夫展で最優秀賞にあたる恩師記念賞を受賞しました。スクリュータイヤは第82回全日本学生児童発明工夫展で経済産業大臣賞を受賞していてそれは去年、高校1年生の時です。
山根さんの考える技術開発の面白さ
川本さん:中学3年の時にすでに発明を!すごい実績ですね。何がきっかけですか?
山根さん:オムクロタイヤを発明する前、東京のスカイツリーで開催されていたレスキューロボット展を見に行ったことがあって、こういうのを作ってみたいなと思ったことがありました。その時は展示されているロボットを家に帰って自分でも作れるか試してみたり、大変刺激を受けたことを覚えています。そんな自由研究をしばらく続けていたころ、公益社団法人 発明協会が主催する児童や生徒が応募できる発明くふう展*があると聞いて、自分のオリジナルで何を創ろう、と思ったときに、クローラーとオムニホイールを組み合わせたらどうなるんだろう、とひらめきまして。
https://koueki.jiii.or.jp/hyosho/gakusei/gakusei_yoko.html
川本さん:なるほど、といいつつ、普通、ひらめかないですよね(笑)。素晴らしい。両方ともタイヤに注目されていますが、これは何か理由がありますか?
山根さん:タイヤというか、実際に動く様子が目に見えてわかるものがすごい面白くて。また、周りの人もその面白さがわかりやすいといいますか、楽しんでくれますよね。個人的には、最初に作ったオムクロタイヤの方が気に入ってます。動きも面白いですし、最初に作った発明で結構スムーズに動いてくれたのですごい達成感がありました。完成させたときは感慨深かったです。
川本さん:私はこの2つの発明の動画を拝見して非常に動きがある発明で見てて、引き込まれる感じがしました。
まず見て驚いたのは山根さんのキャパの広さでしょうか。自分でデザインを起こして、多分マイコンの制御のプログラミングみたいなものも全部自分でやっていらっしゃるんですよね。会社に入ると、仕事が専門化してしまうところがあります。実際私も、今は自分の専門でないところは疎遠になってしまっていたりとか。山根さんはご自分の興味あるところを上流から下流まで本当に一人で具現化されているのが、本当にすごい、私も見習わないとな、と思いました。さっきのひらめき、のところに戻るのですが、オムクロタイヤの発明のプロセスをもう少し詳しく伺えますか?
川本さん:最初のこんなあったらいいなのでの段階では、もう頭の中にしっかりその形だとか動きだとか作り込んでいくものなのでしょうか?それとも部品を3Dプリンターで打ち出してみて、やっぱりこっちの方がいいという試行錯誤なんかもあるんですか?
山根さん:両方ありますけど、大体6、 7割ぐらいは、もう思いついた時点でこういうの作ろうという完成品のイメージがあります。実際に組み立てる中で、やっぱこうちょっと変えようとか、追加したり減らしたりみたいな感じですね。CADではうまく動くのに、実際に部品にしてみたら動かない、とかその調整が一番苦労するところでもあります。パソコン上で設計しても、実際出力されるのは誤差があるので、やっぱり何度も何度も試行錯誤するんです。そこが大変。
TTS川本さんの考える企業における技術開発の面白さ
主な顧客は自動車メーカーなのですが、自動車は大量生産を開始する前には気がとおくなるような試作・調整・検証のプロセスがあります。現状、リアルの世界で組み立てた試作車を測定機で測って、パソコンの中の理想形状と実物との違いを見つけています。これをデジタルの仮想空間に置き換えようとしています。
デジタルで組み立てることによって、パソコン内のデザインに対する修正をダイレクトに導けます。また、海の向こうで作られている部品との相性を確かめる様なことも可能です。お客様と共に、試作に費やす時間や人手を省力化しようとしています。
自分の仕事のことを言えば、私は今X線CTに興味があって、それだとオムクロタイヤやスクリュータイヤの組み立てられた状態でそれぞれの部品がどう変形しているか、なども測定できるのでCADでデザインした時とどう違うのかの比較ができます。
山根さん:僕が今仕様している3DCADはFUSION360なのですが、そこにすでに歪みに関して測定できる機能がついているようです。でもあまり使用していません。今後もっと大きなもの作りに挑戦したときに試してみたいです。
川本さん:そうですよね。試行錯誤も楽しいですから。お金や時間をかけずに、というのは企業の事情であって、山根さんにはまずは楽しくものをつくってほしいです。ところで、山根さんは今高校二年生でとてもユニークな高校に通っていらっしゃると聞きました。
山根さん:山口県立山口松風館高等学校に通っています。県内初の三部制の定時制高校で、午前部・午後部・夜間部がありまして、で僕は午前部に入っています。
でも午前部だからといって、午前中だけが授業というのではなく、完全単位制で、ちょうど大学のように自分で取りたい授業を決めてとります。その授業の時間によって昼まで授業だったり、夕方授業があったり。また3修制と4修制があり、定時制高校なので、まあ、もともと四年で卒業なんですけど、三年で卒業も選べるようになってます。僕は4修制の方を選んで、今二年目なので単位を落とさなければ(笑)あと二年で卒業です。
川本さん:ユニークですね。なぜこの高校を選ばれたんですか?
山根さん:自分の活動とかやりたいこと、ものづくりだったり、ほかにもいろいろあるので自分の自由な時間が欲しいと思い、選びました。川本さんはどうでしたか?
川本さん:私はいわゆる普通の県立高校に行き、普通に部活とか受験勉強をしました。高校2年の時に理系か文系かを選ばないといけなくて、そこでは理系を選びました。ちなみに部活は高校1年までは柔道やってまして、大学では軽音です。エレキギター担当です。
大学の選び方。将来の進路
川本さん:私は理工学部の機械工学科に進学しました。CADで設計もしていましたし、加工もやってましたね。そこから大学院に進み、プログラミングが中心になりました。人間工学とかバイオメカニックスという分野にいたんですけど、人間の体が動く仕組みをパソコンの中で解析して、人のモデルを構築して自分自身がうごいている仕組みを読み解いていくという研究をしていました。
川本さん:山根さんは今高校二年生ということで、受験は再来年ですね?考えている学部はあるんですか?
山根さん:前は経済学部とかも考えていたんですけど、今はもうほぼ工学部にしようかな、と。機械工学系がいいかなと思っています。川本さんに伺いたいんですが工学部に進んだ理由は何ですか?
川本さん:理系に進んだ時点で理学部という選択もあったのですが、私も実際に作ったものを動かしてみる、というのが好きだったんですね。私も山根さんほどじゃないんですが実際に特殊な機構のタイヤを作ってみて動かしてみて楽しいなと思った記憶があります。
山根さん:受験だけでなくて、将来を考えて勉強しておいたほうがいい、という科目はありますか?
川本さん:英語でしょうか。受験は受験として英語やらないといけないのですが、大学に進んだら、完全に英語わからないとツムということがわかりましたので、そこから必死に勉強しました。
山根さん:やっぱりですか・・・。僕も今先生に『英語は絶対必要になるから今からしっかり勉強しておきなさい』といわれています。でも苦手なんです・・・。
川本さん:最新技術についての論文を読むときは必ず英語ですし、また発表も英語でしないと評価されない、という風潮がありますからね・・・。なので私は大学に入ってからも英語は頑張って勉強しました。
山根さん:そうなんですね。まずは受験にむけて今年は英語を頑張ろうと思います。
広報部より
ギターもそうでしたが、お話をうかがっている間に他にも共通の趣味があることが判明。お二人ともロードバイクがお好きとのこと。机に向かう作業の対局にあり、風を感じて走るのがこの上なく気持ちいい、というお二人の感想でした。他にも共通点が多いお二人。川本さんのように山根さんも将来、技術者の道に進まれるのでしょうか?今後の活躍がとても楽しみです。東京貿易グループは全国知財創造実践甲子園などの取り組みを通して次世代を応援していきます。