社員インタビュー:日本とインドネシアをつなぐ現場から始まった、調達システム改革の挑戦
パソコンの画面に並ぶ、無数の部品番号。それを一つひとつ照合し、整理し、正しい形に整えていく――。
日本とインドネシアの両工場をつなぐ新しい調達体制の構築に乗り出したTB播州電装株式会社(BEE)。
現地法人である PT. BANSHU ELECTRIC INDONESIA(BEI)内に調達組織を立ち上げ、部品仕入れコストの一元管理や、仕入れ先から各工場への直接出荷など、調達プロセスの再構築と最適化を進めました。
その中心には、3人の立ち上げメンバーの一人として参加した“若手スタッフ”の姿がありました。データ整備や情報共有などを通じて、ゼロから仕組みを形にしていった、その歩みを追います。
TB播州電装株式会社 BEE とは?
2023年、東京貿易グループの一員となったTB播州電装。ワイヤーハーネスとは、電気を伝える電線と、端子やコネクターを組み立てた集合部品のこと。様々な機器に動力となる電気を送り、機器制御のための電気信号を伝達する役割を持つ重要な部品。そのワイヤーハーネスを生産しているのがTB播州電装株式会社(以下 BEE)です。
多様な生産ラインを持ち、海外にも生産拠点を拡大し、高品質なワイヤーハーネスをグローバルに供給。BEE製ワイヤーハーネスは、バイクや建設機械など、様々な機器に組み込まれ、世界中で役立っています。
目次
・小さな出会いが、未来をひらく原点に
・ゼロから動かす。信頼でつなぐ
・学びが、次の挑戦を生み出す
・コラム|小さな人形に、やさしさをもらって
・取材を終えて|グループ広報部より
小さな出会いが、未来をひらく原点に
原点は、父が持ち帰った日本語の教科書
インドネシア生まれ、インドネシア育ち。その中ではじめて“日本”に触れたのは、小学生の頃。日本へ出張していた父が、お土産に一冊の日本の教科書を持ち帰った。ページをめくると、そこには色とりどりの挿絵。「かわいい」と感じたのが始まりだったという。ひらがなやカタカナを独学で書き写しながら、少しずつ日本語に親しんでいった。
やがてアニメや漫画を通じて自然に日本語を学び、テレビ越しに耳にする言葉のリズムや響きに惹かれていった。言葉を通して文化を知る面白さは、いつしか学びの中心になっていった。
進路を考える頃には、一度は医学部を目指していたが、結果的に日本語学科への進学を決めた。
「周囲からの期待に応えることが原動力。自分にできることを精一杯やろうと思っていました」と振り返る。
どんな場面でも誠実に努力を重ねていく姿勢。それは、のちに異国の地でさまざまな仕事にチャレンジしていく粘り強さの原点にもなった。
大学では日本語だけでなく、日本の考え方や文化にも関心を広げた。そして、将来は海外で働きたいという希望を持ち、日本の大学院へ留学。専攻したのは文化人類学だった。
「バックグラウンドが異なる相手を理解するためには、自分の考えをまず一度置いて観察をすることが大切と学びました。」
文化人類学を通じた学びが、のちに仕事の現場で多様な価値観を持つ人々と向き合う姿勢につながっていく。
海外で働きたいという夢を、日本で叶える
大学院の卒業を前にし、このまま日本に住み、働きたいという思いが強くなっていった。
就職活動を進める中で、インドネシアの大学時代の先輩から紹介を受けたのがBEEだった。日本とインドネシアの両方に工場を持ち、両国の生産をつなぐ調達・管理体制の効率化を進めようとしていたタイミングでもあった。
入社して間もなく、大きな出会いがあった。同じインドネシア人であり、BEEの調達部のリーダーとして活躍する女性だ。日本で生まれ育った彼女は、日本のものづくりの品質に誇りを持つと同時に、インドネシア人の前向きさや柔軟さも大切にし、“両国の架け橋”として働くその姿に強く影響を受けたという。
「国や文化が違っても、信頼を築くことができる。そんな働き方ができると知りました。」と振り返る。
その先輩がリーダーを務めるTOMAX AWARDS(DXの成果を発表する東京貿易グループ内のコンテスト)に参加したことは、大きな転機となった。プレゼンテーションの準備を進め、自分たちの仕事の成果を資料に落とし込む過程で「データの見える化や効率化が、実際の業務をどう変えていくのか」を肌で感じたという。
学びを自ら取りにいく姿勢。その誠実さと吸収力が、のちに始まるプロジェクトで大きな役割を担う原動力になっていく。
ゼロから動かす。信頼でつなぐ
インドネシアの現地から、内製化を支えた日々
入社して数年、BEEが取り組んでいた調達内製化プロジェクトの一員となった。BEEでは、日本とインドネシアの両工場をつなぐ調達体制の構築が進められていた。
それまで外部委託に頼っていた調達業務を、自社で担う“内製化”へ――。仕組みを大きく変える挑戦だった。
プロジェクトの立ち上げは、わずか3名。何も整っていないところからのスタートだった。メールの設定やインドネシアで使用する名刺づくりなど、細かなところから自分たちで進めていった。
「ゼロからの手探りでした。でも、“自分たちの会社の仕組みを自分たちでつくる”という気持ちで進めました。」
最初に着手したのは部品データの整備。同じ製品でも番号や名称が異なっていたデータを整理し、購買体制の土台を整えた。さらに日本とインドネシア、仕入れ先との間で品番を統一し、誰が担当しても状況が分かるよう情報共有の仕組みを整備。
「身近な改善から始めましたが、少しずつ他部署も関心を持ってくれるようになり、プロジェクトは広がっていきました。」
先輩と共に日本とインドネシアを行き来しながら現地の業務を進める中で、一人で現地に残り、採用や教育を担う期間もあった。
「新しく迎えた現地メンバーとは、一つひとつ積み重ねながら関係をつくっていきました。簡単ではありませんでしたが、向き合い続けるしかなかったですね。」
同じインドネシア語を話していても、日本で働く中で身についた自分の仕事の進め方や価値観と、現地での“当たり前”には大きな差がある。
報告のタイミング、仕事の優先順位の付け方、判断のスピード。同じ言葉を使っていても、思いが伝わらない場面は少なくなかった。
だからこそ、言葉よりも行動で示すこと、毎日対話を重ねていくことを大切にしていたという。
夜は、日本で業務を担う先輩と電話で一日の出来事を共有した。
「困難に思えることでも、解決していくことでしか道は拓けない。どうすれば進められるかを先輩たちと相談する時間が、本当に力になりました。」
“調達”という役割がこれまで十分に根付いていなかった現地で、一つひとつ仕組みを形にしながら仲間を巻き込み、理解を広げていった。こうして現地の中に少しずつ仕組みが息づき始めた。
“話すこと”から始まる信頼づくり
現地のスタッフと日本側の担当者。仕事の基準や進め方が異なる中で意見が食い違うこともあった。そんな時こそ大切にしていたのは、“話すこと”だった。
「まずは“なぜそう思うのか”を聞くようにしました。話してみると、相手にも理由があることが分かります。 お互いの立場を理解して初めて、次の一歩が見えてくるんです。」
一度で伝わらなくても、根気強く対話を重ねる。現地メンバーとは日々の会話を通じて考えを共有し、日本側の担当者とはオンラインで状況を説明しながら、意見をすり合わせていった。
「日本のメンバーに現地の状況を伝えるときは、なるべく具体的に話すようにしています。たとえば、“今こういう事情があるから時間がかかります”というように。そうすると理解してもらいやすくなり、安心して任せてもらえるようになったと思います。」
現地と日本、どちらかの立場に偏るのではなく、両方の思いをくみ取りながら最善の方法を探る。その調整の積み重ねが、チーム全体の信頼を強くしていった。
少しずつ、現地主導で業務を進められるようになり、日本側とのやり取りもスムーズになっていった。
「自分たちの判断で動ける部分が増えたことで、責任感も高まりました」と語る。
仕組みだけでなく、現地スタッフ一人ひとりの意識にも変化が生まれた。
「相手を理解して、一緒に進むことがいちばん大事。お互いが気持ちよく働けるように、できるだけ“話す時間”を持つようにしています。」
立場も役割も異なる中で、相手を尊重しながら歩み寄っていく。その丁寧な姿勢こそが、BEE調達の現場に息づく信頼の形だった。
学びが、次の挑戦を生み出す
グループのつながりが、視野を広げてくれる
BEIでの調達部の立ち上げも一段落つき、新しい役割が任された。関東のお客様を担当し、東京貿易グループの他社と同じ空間で働くポジション。業務の幅も求められる視野もこれまで以上に広い、次のステージだった。
「責任を感じる分、やりがいも大きいです。分からないことはその場で確認して、次につなげるようにしています。今は“自分が動くことで会社が動く”という実感があります」と笑う。
グループ各社のプロフェッショナルと日常的に意見を交わせる環境は、彼女の視野をさらに広げた。
「会話の中で“そんな考え方もあるんだ”と気づくことが多いんです。普通に働いていたら、別の会社の方と関わる機会はなかなかないので、とても刺激になります。」
他社の仕事ぶりを間近で見ることで、自分の中の基準や考え方も少しずつ磨かれていく。
「それぞれのやり方に学ぶところがあって、自分の仕事にもさまざまな形で生かしたいです。」
異なる価値観に触れることが、相手を理解する力を磨き、次の挑戦へのエネルギーをくれる。
「これからも学び続けながら、チームや会社に貢献できる人でありたい。そしていつか、自分の経験を次の世代を支える力に変えていきたいです。」
インドネシアでの挑戦を経て広がった新しい役割。そのひたむきな歩みが、グループに新しい風をもたらしながら、彼女自身の未来も広げていく。
取材を終えて|グループ広報部より
BEEインドネシアの調達部立ち上げ。それは、現地のメンバーが自らの手で新しい仕組みをつくり上げていく、勇気ある挑戦でした。
わずか3名から始まった小さなチームが、データ整備や情報共有の仕組みを一から構築し、日本とインドネシアの生産現場をつなぐ体制を形にしていく過程には、グループの行動指針に掲げる「共創力」「突破力」「誠実」の精神が息づいています。困難に直面しても、粘り強く、誠実に行動し、周囲を巻き込みながら前に進む。その姿勢はまさに、グループが大切にする“現場から未来を切り拓く力”を体現していました。
内に秘めた情熱が、確かな成果を生み出していく――。今回の取材を通じて、現場で挑戦を続ける一人ひとりの努力が、グループ全体の新たな可能性を広げていくことをあらためて実感しました。これからも、現場から生まれる挑戦を追いかけていきます。
東京貿易グループでは、さまざまなキャリアの機会があります。ぜひ一緒にはたらいてみませんか?お気軽にこちらからお問い合わせください。
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