TOMAX AWARDS 銀賞:グループ連携で挑んだ“滴下の見える化”への道

東京貿易グループでは、グループ内の優れた取り組みを表彰する「TOMAX AWARDS」を毎年実施しています。今回紹介するのは、その中で 銀賞を受賞したプロジェクトです。

ガスの安全を支える“付臭滴下装置”を手がける東京貿易メカニクス(以下 TMX)。“滴下の確認を、現場の目視から脱却したい”という現場の声を起点に、今回のプロジェクトは動き出しました。

突破口となったのは、グループ会社であるティービーアイ(以下TBE)のセキュリティカメラシステムとの連携でした。

TMX と TBE が専門性を持ち寄ることで、画像による“滴下の見える化”が大きく前進。「本当に映るのか?」というゼロからの挑戦は、協働を重ねながら形になっていきました。

今回の記事では、この取り組みを中心で支えたTMX の営業と技術のお二人に、プロジェクトの舞台裏を伺います。

  • PROFILE

    TMX 営業

    エネルギー関連設備を担当。複数の顧客から寄せられた「滴下を遠隔で確認したい」という声を起点に、今回のプロジェクトを立ち上げる。
    TBEとの連携を生み出し、現場検証では最も条件が厳しい設備を選定。顧客調整・現場対応・社内外の橋渡しを担い、プロジェクト全体を前に進める役割を果たした。

  • PROFILE

    TMX 技術

    付臭装置を中心に、構造・動作の技術対応を行う技術職。これまで “構造や動きを扱うハード寄りの業務” が中心だった中、今回のプロジェクトでは 画像判定というソフトウェア領域 に挑戦した。福岡工場での撮影条件の確立から、現場での検証対応、OS更新への再調整など、技術面の核心を担った。今回の取り組みを通じて、技術領域の広がりと新たな手応えを得た。

プロジェクトの始動 ― 課題の発見と最初の一歩

──まずは、このプロジェクトがどのように始まったのかを伺います。現場ではどんな課題が見えていたのか、そして営業と技術がどのように最初の一歩を踏み出したのか。立ち上げの背景から聞かせてください。

Q1:プロジェクトの始まりについて

ガスコンロをつけたときのあのにおい、実はガスそのもののにおいではありません。本来ガスは無臭で、使用していることが分かるよう、法律で“においを付ける”ことが定められています。その際に使われているのが、液体状の付臭剤です。付臭装置では、この付臭剤を“しずく状”にして、ガスの流れの中に一定量ずつ滴下しています。

ぽたぽたと落ちるごく小さな液体を、途切れなく、正確に落とし続ける。この工程が、ガスの安全を支える重要な役割を担っています。

ガスを安全に供給する工程では、滴下がきちんと行われているかどうかの確認が欠かせません。しかし、その確認はこれまで現場での目視に頼らざるを得ない状況でした。担当者が装置の前まで行き、滴下の様子を都度確認する必要があり、負担も大きくありました。また、受入基地では無人化が進んでいることもあり、「遠隔でチェックできないか」という声がさまざまな取引先から挙がっていました。

“遠隔でも確実に確認できる仕組みが形になれば、必ず役に立つ”と感じたのが、すべてのきっかけでした。まず社内で相談し、技術メンバーにも声をかけ、 “実現できるのか”“どんな方法なら可能性があるのか”を一緒に検討し始めました。こうして、営業と技術が共同で進めるプロジェクトが動き出しました。

営業から相談を受けたとき、 「これはやるべきだ」とピンときました。ただ、これまで私たちが扱ってきたのは、付臭装置の構造や動きを扱う“機械側の仕事”が中心。“画像で滴下を判定する”という発想は初めてで、ソフトウェアを組み込んだ開発は、これまでの延長線にはない挑戦でした。

それでも、新しいことに取り組まなければ、TMXとしてこの先も必要とされる価値はつくれない、という焦りのような感覚もありました。営業から「複数の会社で同じ課題がある」と聞いていたので、やる意味がある案件だというのも最初から理解していました。

そこでまずは、「本当に実現できるのか」「どんな方法なら可能性があるのか」を基本から整理。未知の部分は多かったのですが、“現場で確実に使えるものをつくる”という軸は、最初からぶれていませんでした。

Q2:プロジェクトはどのように動き始めたのですか?

画像で滴下を判定できるか検討し始めたとき、最初の課題は 「本当にカメラで映るのか」 という点でした。他社のカメラも調べましたが、なかなか一筋縄ではいかない予感があり、方向性を決めきれないでいたんです。

そんなとき思い出したのが、東京貿易ホールディングス(以下TBH)主催のグループ横断の人材育成研修で一緒だった TBEの担当者です。TBEはカメラだけでなくソフトウェア開発にも強い会社。研修後も社内で会えば話をする関係が続いていたので、 「こういうことってできる?」 と相談しにいったんです

するとその場で “できますよ” と返ってきて、試験用のデモ機もすぐ貸し出してくれました。その映像を見て、「これは実現できる」 と初めて確信が持てました。

こうした 東京貿易グループの“横のつながり” が、挑戦の最初の一歩を踏み出すうえで大きな後押しになったと思います。

技術の突破 ― 試行錯誤と壁を乗り越えるプロセス

――プロジェクトが進むにつれ、技術面では次々と壁が立ちはだかったということですが、どのように試行錯誤を重ね、突破口を見つけていったのか。そのプロセスを伺いました。

Q3:最初に直面した大きな壁は何でしたか?

TBEがつくってくれたソフトウェアとカメラのデモ機をもとに、まずはTMX の福岡工場で “本当に滴下が映るのか” を確かめる実証実験を始めました。

しかし、ここからが本当に大変でした。画像で滴下を捉えるためには、“滴下そのものがきちんと映ること” が絶対条件です。しかも対象は、人や設備のように輪郭のはっきりしたものではなく、形が一定せず、光を透過する“透明な液体”。そのため、わずかな条件の違いでも映り方が大きく変わってしまいます。

実際にやってみると、これが驚くほど難しい。カメラの角度が少し違うだけで見えなくなり、照明の反射で白飛びしたり、影になったり。背景の色によっても映り方がまったく変わってしまう。条件をひとつ変えるたびに、結果が大きく揺れてしまう状態でした。

「やっていることが間違っているのか?」
「そもそもこの方法が成立するのか?」

そんな不安が頭をよぎりながらも、答えがない以上、試すしかない。ひたすら条件を変えて、何度も何度も撮影を繰り返しました。それでも続けていくうちに、「この角度なら見える」「この背景なら確かに映る」という小さな“手応え”がようやく見えてきたんです。

その一歩一歩を積み重ねるしか、前に進む方法はありませんでした。

福岡工場での実証は技術が中心でしたが、その先にはお客様の現場での検証が必須です。そこまで進めるためには、お客様や TBE との調整が欠かせませんでした。設備をお借りする時間の調整や、試験条件のすり合わせなど、現場の方々と相談しながら機会をつくっていきました。

技術が少しずつ“映る条件”を見つけていく姿を見て、営業としても、この挑戦を前に進める役割を果たしたいという思いで動いていました。

Q4:社内検証から現場検証へ──どのように乗り越えていきましたか?

福岡工場での実証で“映る条件”の手応えをつかんだ後、次のステップは お客さまの現場での検証 でした。
ところが、ここからがまた大きな壁でした。設備の高さや配管の位置、光の入り方など、現場特有の環境では、福岡工場とまったく同じ条件が再現できません。実際に試してみると、「社内では映ったのに、ここでは映らない」という場面が何度もあり、カメラの位置や撮影条件をその都度見直す必要がありました。

さらに検証が長期化する中で、お客さま側の制御機器のOSがバージョンアップされ、操作仕様が変わってしまうこともありました。そのたびに対応をやり直す必要があり、“一歩進んでは振り出しに戻る”ような状況が続いた時期もあります。

現場で得た映像を共有しながら、TBEにソフトウェアの調整をお願いするなど、三者で試行錯誤を重ねていく中で、次第に現場でも安定して検知できる状態に近づいていきました。

お客さまの現場で検証を進める段階では、「一番条件が厳しい設備で検証しよう」と判断しました。付臭滴下はガス供給において非常に重要な工程であり、どんな状況でも確実に確認できる状態をつくることが不可欠だと、営業としても技術としても認識していたからです。

そのため、設備の構造や現場環境を丁寧にヒアリングし、技術メンバーとも情報を共有しながら、どうすれば確実に映る状態をつくれるかを一緒に検討していきました。必要があれば、車で1時間半〜2時間ほどかかる現場にも足を運び、試験の状況を確認したり、その場で得た気づきを技術にフィードバックするなど、現場 → 技術 → TBEの三者で方向性を揃えながら検証を進めました。

この現場でお客様に納得いただけるレベルに仕上がれば、どの現場でも通用する。そう信じて、一つひとつ丁寧に積み重ねていったフェーズでした。

価値の創造 ― 完成品がもたらした変化と未来への挑戦

――完成したシステムは、お客様や現場にどんな価値をもたらしたのでしょうか。そして今回の挑戦を経て、お二人はどんな未来を描いているのか。成果と今後の展望について伺いました。

Q5:完成したシステムは、どのような価値を生みましたか?

お客さまからの声を聞く中で、この仕組みが “現場の負担を減らす” という枠を超えて、業界の当たり前を変えていく可能性 を強く感じています。滴下の確認は、長い間「現場で直接見るもの」という前提がありました。そこに、画像による判定や遠隔監視という新しい選択肢が生まれたことは、お客さまにとっても、私たちにとっても大きな転換点です。

実際に、一番条件の厳しい現場で検証したことで、「ここまで見えるなら安心だね」と評価いただき、ほかの取引先からも前向きな相談をいただく機会が増えてきました。

今回の取り組みは、 “安全をどうつくるか” の考え方自体を広げていける と感じています。時間をかけて作り上げてきた TMX のシステムを、さらに多くのお客さまに届けられるよう、これからも挑戦を続けていきたいと考えています。

技術としての大きな成果は、画像による判定と装置を組み合わせた“新しい仕組み”をシステムとして提供できる形にできたことです。これまでは付臭装置の構造や動きを扱うメカ中心の領域が多く、画像判定やソフトウェアと連携したシステム開発は、TMXとしても新しい挑戦でした。今回の取り組みで得た知見は、今後の製品づくりやお客さまの課題解決にも活かせるものになりました。

“現場で確実に使える状態”までつくり込めたことは、技術としての大きな成果であり、TMXの新しい価値をつくる一歩になったと感じています。

Q6:今後、どのような挑戦をしていきたいですか?

今回のプロジェクトは、技術部として 自分たちの“殻を破るきっかけ” になったと感じています。営業やTBEと横に連携しながら進める中で、自分たちだけでは気づけなかった視点や考え方に触れ、現場の声を受け取り、それをどう形にするかを議論しながら進めていく経験は、大きな学びになりました。

同時に、今回の取り組みを通じて「もっと自分たちの技術を高めていきたい」という思いも強くなりました。画像やソフトウェアとの連携といった新しい領域には、まだまだ伸ばせる余地がありますし、TMXとして提供できる価値も、もっと広げていける手応えを感じています。

これからも横の連携を大切にしながら、“現場で本当に使える技術” を磨き、その中で自分たちが次の価値を生み出せる存在になっていきたい。今回のプロジェクトは、その出発点になりました。

TOMAX AWARDSの発表では、あえて自分ではなく営業部のメンバーに登壇してもらいました。これから拡販を担っていくのは彼らであり、任せることで得られる成長がある──そう信じて、あえて一歩を託しました。

今回のプロジェクトでは、営業・技術・TBEが横につながりながら取り組むことで、TMXだけでは形にできなかった価値をつくることができました。この経験から、東京貿易グループにはさまざまな専門性を持つ会社があり、連携しながら挑戦すれば、もっと大きな可能性を広げられると強く感じています。

ひとつの成功で終わらせるのではなく、若いメンバーと一緒に新しい提案に挑み、今回のように“つながりから生まれる価値”を会社全体へ広げていきたいと思っています。これからは、社内外の力をつなぎながら、TMXの次の価値、そしてグループ全体の新しい可能性を切り開いていける存在になりたい──そんな思いが、今回の取り組みでより強くなりました。

――営業・技術・TBE の三者が横につながり、それぞれの専門性を持ち寄って進めてきた今回のプロジェクト。

“新しい領域に挑む技術” と “組織として挑戦を広げたい営業”。それぞれの思いが自然と同じ方向を向いていたことが、今回のプロジェクトを前に進める大きな力になったのだと感じます。

完成したシステムだけでなく、その過程で生まれた視点の広がりやつながりこそ、次の挑戦につながる原動力になっていく。そんな可能性を強く感じたインタビューでした。

 

 

Column:出張先での楽しみは“おいしいもの探し”

出張も多く、全国各地に足を運ぶ日々。仕事の合間に、その土地ならではのおいしいものを楽しむのが密かな楽しみです。時間が許せば気になっていたお店に足を運び、北陸の魚介類をはじめ、パンやスイーツなど全国の名店もチェックしています。

事前に気になるお店を Google Map にマークしながら、忙しい中にも楽しみを見出すことを大切にしています。写真は一番のおすすめ、オードリーの「ロンシャンティ」。チョコでコーティングされた外側と、軽やかな生クリーム、そこに入った一粒のいちご。この組み合わせは最高です。

 

Column:キーボードにこだわる理由

こだわりがあるのはキーボードです。日々使うものだからこそ、使い心地のよさが仕事の能率に直結すると感じています。キーの感触や打鍵音、反応の速さなどは製品ごとに驚くほど違いがあり、タイピングのしやすさを求めて、これまでさまざまなものを試してきました。

仕事道具のひとつですが、手にしっくりくるかどうかは集中力にも影響します。写真はその中でも、特に気に入って使っているキーボードたち。自分に合った道具を選ぶことも、良い仕事につながる大切な要素だと感じています。

取材を終えて|グループ広報部より

今回の取り組みは、現場の課題に真正面から向き合い、必要な力を社内外から集めながら形にしていった点に大きな意義があります。

営業・技術・TBEがそれぞれの強みを活かし、役割を越えて連携したプロセスは、東京貿易グループの行動指針である 「開拓力」「共創力」「突破力」 をまさに体現するものでした。

ここで得た知見とつながりが、次の価値創出に向けた一歩として、グループ全体に広がっていくことを期待し、私たちもこうした挑戦をこれからも広く発信していきます。

 

東京貿易グループでは、さまざまなキャリアの機会があります。ぜひ一緒にはたらいてみませんか?お気軽にこちらからお問い合わせください。

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