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次世代を育む  大学と企業のできること               関西大学 山田教授×東京貿易グループ 坪内社長 対談    (前編)

こんにちは! 関西大学 教育推進部 山田剛史教授と弊社(東京貿易ホールディングス株式会社)坪内秀介社長の対談をお届けいたします。大学と企業が直面する共通の課題や次世代育成に向けた取り組みについて、山田教授と坪内社長が熱く語り合います。40年ぶりに母校を訪れた坪内社長が感じた大学の変化や、関西大学の教育プログラムの改革、学生の意識の変遷、企業が求める人材像など、お話は多岐にわたりました。今回は前編となります。それではどうぞ。

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坪内社長:私は関西大学卒業生なのですが、1984年に卒業して以来、今日40年ぶりに母校にやってきました。当時と比べると、校舎やキャンパスも美しく様変わりしていますね。驚きました。私が大学生のころは時代もあったと思うのですが、授業には出席が必須のものは出ましたけれども、あとはサークル(ウィンドサーフィング)に夢中でその仲間とずっと喫茶店にいたり、ほぼ勉強した、という記憶がありません。(苦笑)この対談の前に、少し最近の関大生事情を調べてみたのですが、最近の学生さんはとてもまじめで充実した学生生活を送っていらっしゃるようですね。こちらのアンケートを見ると、『在学中、熱心に取り組んだこと』の第一位が『授業に出席する』となっています。

(関西大学のアンケート結果より)https://www.kansai-u.ac.jp/ir/research/asset/index/alumni_survey_poster202401.pdf

 

 

 

教授:そういう意味でいうと、大学の授業風景は一変しました。出席率は非常に高く、90%以上になります。昔のTVドラマで、大学教授を揶揄して、20分遅れてやってきて、1人で黒板に向かって講義して、20分早く切り上げる、なんていうシーンを見たことがあります。今はそうした授業は完全に無くなったとは言えませんが、随分変わってきたと思います。教育プログラムも改善されているんですね。また大学に行ったことの良さは卒業時にはわからないといわれてきて、10年、20年と社会にでてからわかるんだ、なんてことも言われていました。では教育プログラムを改革した今はどうなんだろう、ということで、関大で初めて卒業生調査を行いました。そのアンケートの結果がこちらです。これは関大の卒業生の大体45歳くらいまでの方を対象にして、満足度等を聞いてみたもので、満足度では95%という数値が出ています。これは本当によかったです。

坪内さん:教育プログラムを改革しなければならない理由はなんだったのでしょうか?

 

山田さん:社会が変化して大学の役割も変わってきました。高度経済成長期の時代は大学生というだけでもてはやされました。大学で勉強していなくても入社してOJT(On the Job Training)で学べばいいというおおらかな雰囲気もありました。極端に言えば、10人採用して何人か使える人が出ればいいといったような。今や、少子化、技術革新という時代の変化の中で企業もそんなに人をとれない。質の高い即戦力を出してほしいという要望が社会的に高まり、それが文科省にも影響をあたえ、大学の教育改革が叫ばれるようになりました。学生の採用側である坪内さんの今の学生の印象はどうですか?

 

坪内さん:そうですね、いろんな意味で変化が在りすぎて、何とも言えないというのが正直なところです。私の時代は終身雇用が当たりまえで、新卒で入社した企業に定年までいる、というのがステータスなところがありました。しかしそれから、日本経済が停滞し、派遣制度が発達したり、と労働市場に弾力性がうまれました。今の就活生の話を聞いていると、転職前提の方のたくさんいらっしゃいますね。そういう意味で入社しても悠長にしてられない。学生時代から企業に入った後のことを考えておられるのかなあという印象も受けます。また私たちの時代は出世することが是とされる価値観でしたが、今はあまりえらくなりたくない、それより自分らしい働き方を実現したいという気持ちが強い人も多いのかなと思います。うちの会社には様々な国籍の方がいらっしゃいますが、たとえば大学時代に留学で日本にやってきて、そのまま日本で就職して、という人たちは、働くこと、会社の中で上を目指すことに大変貪欲です。ハングリー精神というのでしょうか。

 

山田さん:それは共感するところがあります。なぜなのでしょう?

 

坪内さん:私見ですが、日本の社会が豊かになったということなのでしょうね。働いていれば、普通に衣食住は足ります。日本の「普通」って世界的にみれば「高い」レベルです。新興国などにいくと、十分ごはんがたべられない、道端に座り込んでいる、という人をまだまだ見かけます。

 

山田さん:なるほど、そういう若い世代を会社の仲間として迎えなければならない。経営者としてはどういう気持ちなのですか?

 

坪内さん:正直悩んでいます。年功序列・終身雇用の時代はいわゆる『レール』が敷かれている。経済の成長パターンも米国をまねていればいいし、会社でも先輩の言う通りにしていたらまず間違いない。長い時間のなかで得意なことを磨き上げていくという余裕もありました。ところが今はVUCAといわれ非連続の時代といわれます。私もよく社員に話すのですが、近い将来、今やっている既存事業は必要とされなくなるかもしれない。それに備えて未来への視点をもち、種まきをしなければならないと。ところが、これからの会社の未来を担う若い世代の常識は私の世代とは違います。彼らの考え方を尊重して、ともに歩まなければなりません。私の若い頃は会社に来るときの服装はきちっとしなければならない。服装を整えることで組織に規律が生まれるという考えでした。でも「どうしてスーツじゃないとだめなんですか?結果を出せばいいのでは?」と問われると、「確かに」と納得する自分もいる。企業として成果を求めていくことにコンセンサスを置いて、プロセスはいろいろあってもいいのかなと思います。このように、我々世代の価値観の守るべきところは守り、一方で若い世代の価値観を理解し、併せていくところのせめぎあいがあります。

山田さん:型として継承するべきところは理屈抜きで継承しろ、というのは高度経済成長期は簡単でしたね。そこを守れば明るい未来が待っているといえるわけですから。そういう未来が見えないので今の学生はある意味豊かだけれど、ある意味つらい。学生と話をしていると、将来が不安で大きな野望が持てない、という意見をよく聞きます。坪内さんは学生にもっとこうだったらいいな、と思うことはありますか?

関西大学 教育推進部 副部長 山田 剛史 教授

 

坪内さん:うーん・・・正直にいうと、あまり理論武装しなくていいので、未経験なことが多いことを武器とするくらいの、なんというか元気で、なんにでも好奇心旺盛で、そしてわからないことを教えてくださいと素直に言えて、経験することを恐れず何でも吸収できる、人でしょうか。

東京貿易ホールディングス(株) 坪内 社長

もちろん、自分の専攻や専門技能には深い知識を持つべきですが、あまり小さくまとまらず、周りに力を与えたり、逆にもらえたりする人でしょうか。失敗のことは心配しなくてもいいです。誰でもやるので。安心して。

 

山田さん:わかります!僕はたくさんの大学生と話す機会があるのですが、ほんとに理論武装するんですよ。間違いを素直に受け入れられず、まず「でも」がでる。聞けば家庭で両親に叱られたことがなく、間違えても「ごめんなさい」が言えない。

 

坪内さん:私の場合は学校で先生に怒られて、そのことを家で言ったら、親にも怒られる、というパターンでしたけども(笑)。

 

 

山田さん:今では、「なんでうちの子を叱るんですか」と保護者からのフィードバックが増えたと感じることもよくあります。

 

坪内さん:大変な時代になりましたね。でも幼少期に叱られたことがない人はちょっと大変ですね。社会人になって働きだすと、ほんとにいろんなことが発生します。それをどう乗り越えるのか。お客様に迷惑をかけてしまった、大変お怒りになっている。そのときに出てくる最初の言葉が謝罪ではなく、「でも」と反論したりしたら、会社が大変ですね(笑)。ちゃんと謝罪して、過ちをリカバリーし、さらにそのピンチをバネにお客様からさらに信頼を得る、というところまで持っていけるか。社会人になるとそこが勝負ですからね。そういう困難をウソやごまかしではなく誠実に乗り越えないと、その人も成長しないし、また組織も発展しないんです。

 

山田さん:僕が見る範囲では、今の学生って、先ほどいった「不安」なので理論武装するんですが、経験値がたりなくて自己完結してしまいがちです。僕はそんな時は学生らの理屈をいったんは受け止めて、「あなたの考えはよくわかる。それで、あなたはどういう行動をおこしたの?」って聞きます。意識の世界と体験の世界をつなぐことがとても大事です。そして意識の世界から一歩踏み出して、実際に行動に移せた人は強いです。自信になりますし、自己肯定感が高まります。そうすると過度な理論武装も解けていきます。

 

坪内さん:先生のブログを拝見したのですが、関西大学で教鞭をとられるばかりでなく、吹田市、関西同友会ともつながっておられ、またソーシャルアントレプレナーのプロジェクトにもかかわっておられますね。それはやはり学生には実践が必要、社会のオープンにつながっていくことが重要だというお考えなんでしょうか?

 

山田さん:その通りです。今までの大学は閉じすぎていたように思います。でも大学も社会の一員です。学生は頭が柔軟な人生のこの時期に、自身の発達の一手段として社会とかかわってほしい。その経験を通して、自分はどのように社会に関わるのかを考えるきっかけにしてほしいです。真面目に授業にでているだけでは修得できないことがそこにはあると信じています。

 

坪内さん:働いていると常日頃は自分たちの事業にフォーカスしてしまうところがあるんですけれども、いざ新しい事業を作ろうとしたときに、結局会社の中にいると、狭い世界の中で発想も偏ってしまうことがありますね。今日うかがって、こういうキャンパスにいるだけでも、気持ちが開放されてなんかやれそうな気がする(笑)。いろんなアイディアをいただきながら、企業も一緒に動くというのはできるんじゃないかなと思います。

 

後編に続きます。

広報室から
対談の前にキャンパスを見学。坪内さんは「40年ぶりだなあ」と感慨深そうです。

関西大学 千里山キャンパス 正門
立て看板の様子は昔のなごりがある、とのこと。

「このあたりは様変わりですね。ほんとにきれいになりました。」

「僕の校舎はこのあたりだったかな。」

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