社員インタビュー:高品質の鉄はここから生まれる。ものづくりの根底を支える仕事
車のボディやジュースの缶。住まいの骨格となる建材から陸をつなぐ大きな橋…。周りを見渡すと、あらゆる場所に鉄が使われています。
この鉄がものづくりの素材となるためには、板状にしたり、薄くのばす必要があるのですが、そのための製品を作っているのが日本アドバンスロール(以下JAR)。
今回のインタビューはこのJARの製鋼グループで主任を務める橋本さん。日本の製鉄業を支える仕事の醍醐味やJARの向かう未来について、じっくりとお話をお伺いしました。
この記事でわかること
・日本アドバンスロールについて
・製鉄業に欠かせない部品「鍛造ロール」とは
・ものづくりの現場での仕事の進め方
・社会と暮らしを支えるものづくりの醍醐味
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PROFILE
橋本 孝太 Kota Hashimoto
日本アドバンスロール株式会社
製造部 製鋼グループ 主任
2007年日立協和エンジニアリング株式会社(現日本アドバンスロール株式会社)に入社、圧延ロールの図面制作を経て、ロール製造の二次溶解部門で、鍛造ロールの製作工程の知識、経験を身につけ、新しい製造工程を考案。2016年より二次溶解部門の主任に。2017年より溶解部門の主任も兼務。35名のメンバーと共に日々、鍛造ロールの製造の未来を作っている。
目次
・世の中に欠かせないものをつくる
・よりよい製品は、作ってみないとわからない
・経営視点でものづくりをみつめる
・コラム|癒やしの時間
・取材を終えて|広報室より
世の中に欠かせないものをつくる
ものづくりに携わることは自然な流れだった
私が育った茨城県ひたちなか市は、日立グループ発祥の地ということもあり、製造業が多く集まる地域でした。周りで働く大人も技術者や専門職の人が多く、小さなころからものづくりの環境に触れて育ちました。
工業高校へ進学後、工学部のある大学へ進学。仕事について本気で考えはじめたのは、大学3年生の頃、就職活動を意識するようになってからです。
世の中にはいろんな仕事があるけれども、自分が就く仕事として考えた時に、「ものづくり」にしっかりと関わる仕事以外は選択肢にありませんでした。自分の手で、ものを作る。お客様は、それを購入し使っていただく。自分がつくる製品の品質を高めていけば、それに見合う対価をいただくことができる。そういった手応えのある仕事に就きたいと思ったんです。
生まれ育ったこの場所で働くこと。ものづくりに関わること。就職活動では、この2つを叶える会社を探しました。その中で出会ったのが「日立協和エンジニアリング(現日本アドバンスロール)」でした。
実はもう1社、工具メーカーと迷ったのですが、どうせなら大きなものがつくりたいと、鍛造ロールを製造する今の会社に決めました。
鉄をつくるために欠かせない「鍛造ロール」とは
鉄鉱石とコークスを高温下で化学反応させることで生まれる「鉄」。その鉄を、ものづくりの素材として使えるようにするために、板状にしたり、うすく伸ばしたりするプロセスで使われるのが「鍛造ロール」です。
うどんを作る際、小麦粉をこねて生地をのばすための麺棒をイメージすると分かりやすいかもしれません。
小麦粉であれば木の棒で生地を延ばすことができますが、鉄を延ばすためには「高温に耐える力」や「鉄に負けない硬度」、「圧延に耐える強靭性」、「高い寸法精度」など様々なことが求められ、それを実現するには高い技術が必要となります。
鍛造ロールは、小さなものでも数十kg、大きなものでは50トン以上にもなる製品です。使われる場所や延ばす金属によってあらゆる鍛造ロールがあり、さらにお客様の要望に添ったオーダーメイドで製造されていきます。
表面から5㎝をより固くして欲しい。圧延材に適した強さに調整して欲しいなど、1つ1つの要望に合わせ、数ヶ月をかけて形にしていくのです。
1951年、日立製作所として鍛造ロールの開発をはじめて以来、70年以上の年月をかけ、積み上げ、受け継ぎ、今も進化を続ける技術が鍛造ロールの専門メーカーとしての核となっています。
よりよい製品は、作ってみないとわからない
ものづくりの現場で、一人前になるには
入社して1年半は図面製作が主な仕事。それを経て、2年目の秋ESR(ロール製造の二次溶解部門)へ配属されました。この異動は、自分自身の仕事への取り組み方を変えるターニングポイントとなりました。
二次溶解とは、鍛造ロールの質を左右する重要な工程。適切な成分に設計されたスラグを溶解する際に発生する1600℃以上の熱でロール素材を溶解し、溶けた素材を鋳型(水冷鋳型)に注入し、固めます。
凝固速度のコントロールによって、ロール鋼の成分偏析(金属の組成が不均一になること)を抑制し、非金属介在物の除去をすることでロール鋼の品質を高めていきます。
デスクワークがメインだったそれまでとは異なり、製造の現場を肌で感じる日々。「ESRとは何?」と、何も分からない状態からのスタートでした。
分からないことを調べたり先輩や仲間たちから学ぶ中で、仕事の全体像が理解でき、自信を持って「この仕事ができる」といえるようになるには5年ほどの月日を要しました。
固く精度の高い金属製品をつくるには、現場で積み重ねた経験や勘といったものが少なからずあります。
お客様の製品への要望をもとにどう作り上げていくのか。設備の状態や原料となる素材など、様々な要素が複雑に絡み合っているからこそ、過去の経験や様々なデータをもとに最適だという製造方法を考え、実行に移し、試行錯誤を重ねることが必要なのです。
新しい製造工程で、より最適な製品を生み出す
自分にとって大きな自信となった仕事があります。それは、製造現場で働き始めて6年目のことです。当時、ロール製造の2次溶解には大きく2つの製造工程がありました。しかし、お客様の要望により応えるために、新しく3つ目の製造工程を生み出せないか?と考えるようになりました。
新しい製造工程を生み出すのは簡単ではありません。鍛造ロールの製造には、シミュレーションだけでは分からないことも多く、実際に試作をすることが必要になります。
もちろん、試作には、時間もコストもかかります。大きな投資に値するため、成功した際の「メリット」や「やる意義」がなければ、実現には至りません。様々な情報を集め、資料を作成。綿密な準備をした上で、会議で提案をすることにしたのです。
JARは、挑戦に価値があれば、チャレンジさせてくれる会社。「やってみようじゃないか」とGOサインが出て、まずは一段階クリアだと安心したと同時に、必ず成し遂げなければ…という責任感も生まれました。
きっとこの方法が適切だという仮説を1つ1つ検証しながら進める日々。時には思うようにいかないこともありました。でも期待を裏切ることはできない。諦めずに挑んだ結果、第3の新しい製造工程を作り上げることができました。
品質もコストも最適なバランスのとれた第3の製造工程。それを実現することは会社にとっても大きなプラスになるという信念が、自分を支えてくれました。
その後まもなく、主任として1つの部門を任されるようになったのです。
経営視点でものづくりをみつめる
部署として利益を出すという決意
主任というポジションで働く中で決めたのは、受け持つ部署を1つの会社だと捉え経営していこうということです。経営視点でものづくりを追求すること。自分の部署でしっかりと利益を出していくことが、未来の競争力へと繋がっていく。そんな考えを持つようになりました。
鍛造ロールをつくるには大型設備が必要となります。新しい設備や大型の設備を入れるには、とてつもない投資が必要ですが、設備を適切に入れ替えることおよび現在の設備を適切な状態に保っていくことは、製品への競争力になります。さらに、ものづくりを前に進めていくには、より多くの人材も必要です。それも全て、会社に利益がでていなければ未来への投資はできません。
例えばロール素材となるスクラップや合金鉄だけでも年間10億円以上の仕入れがあります。この仕入れを最適なものにしたり、無駄の出ない製造工程を検討することで、利益の幅が広がります。時には部署を飛び越えて相談し合うこともあります。
ひとつひとつの積み重ねが、会社としての大きな利益へとつながっていく。こういった意識を持って仕事に向かっています。
現在では、2つの部門の主任を任されるようになり、合計35人以上のメンバーをみています。仲間たちと共に、JARの未来へとつながるものづくりにチャレンジしています。
仲間とつくるものが、暮らしを社会をつくっている
この仕事の醍醐味は、仲間の力を結集し、ひとつの大きな鍛造ロールという製品を作り出すというところだと思います。ひとりではない、みんなの力をあわせて作るからこそ、できあがった時にはなんともいえない充実感に満たされます。
そして、私たちの鍛造ロールを通して作り出された素材である鉄が、幅広いものづくりの現場に運ばれていきます。自動車のボディ、建材、家電製品、アルミ缶…。
数え切れないほど様々な製品となり、暮らしや社会を支えています。自分のつくったものが、新たな価値を生み出し、世の中を豊かにしている。そんなものづくりの醍醐味がここにはあります。
だからこそ、自分たちのものづくりとこの会社を、前へ進めていきたい。未来を見据えてものづくりに向き合っていきたいと思います。
取材を終えて|広報室より
今回はJARの製鋼グループで主任を担当する橋本さんにお話をお聞きしました。
普段目にすることの無い、鍛造ロールの製造の世界。自動車のボディ、建材、家電製品、アルミ缶…。暮らしを支える様々な素材をつくるのに欠かせない製品でした。
「もっと良くなるにはどうすればいいのか」製造現場での新工程の提案、主任となってからの経営視点。
どちらの場合にも、関係部署や人を巻き込み、向かうゴールのためには努力と行動を惜しまない。そんな姿が印象的でした。
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Recruit 募集要項|東京貿易グループ / TOKYO BOEKI GROUP (tokyo-boeki.co.jp)
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