社員インタビュー:入社2年目が挑む鉄鋼業界の変革東京貿易グループ連携の最前線
東京貿易グループは、異なる分野を専門とする企業が連携する“事業開発型商社グループ”です。各社の強みを掛け合わせ、業界の枠を超えて創造的かつ実効的に社会課題の解決に取り組んでいます。
その1つの例が、東京貿易マテリアル(TML)と東京貿易テクノシステム(TTS)の協働です。脱炭素、電気炉化、現場のDXなど激動する鉄鋼業界において、TMLが前面に立ち、TTSがデジタルソリューションを提供しています。 今回は、TML入社2年目の須原彩斗さんをご紹介。彼は「デジタル事業推進グループ」で、国家プロジェクトにも関与しながら、伝統産業にテクノロジーを融合し、“次の当たり前”を築いていく最前線で奮闘中です。
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PROFILE
須原 彩斗 Ayato Suhara
東京貿易マテリアル
デジタル事業推進グループ
2024年新卒入社。コロナ禍をきっかけに内向的な性格を変えたいと大学4年時には、アメリカ・シアトルに留学し、挑戦を重ねた経験をもつ。TMLでは、炉内測定システムの営業・導入支援を担当。現場対応からTTSとの連携まで幅広く担い、国家プロジェクトにも関わる。「言われたことは必ずやる」「わからなければすぐ聞く」を信条に、技術と現場をつなぐ“任せられる営業”を目指している。
目次
・挑戦のフィールドは、未経験の世界
・測定の現場を支える、信頼と即応の力
・当たり前のその先へ、現場から変えていく
・コラム|身体を動かして、無心になる時間
・取材を終えて|グループ広報部より
挑戦のフィールドは、未経験の世界
伝統産業に切り込む、若手の挑戦
「2050年カーボンニュートラル」を掲げる日本にとって、鉄鋼業界の構造転換は喫緊の課題だ。とくにCO₂排出量の多い高炉から、より環境負荷の低い電気炉への転換。そして、熟練者の勘や経験に頼ってきた現場のDX化。いま鉄鋼業界は、これまでにない“変化のスピード”を求められている。
そんな現場に挑むのが、東京貿易マテリアル(TML)の須原彩斗さんだ。入社2年目。まだキャリアは浅いが、製鉄所の最前線に立ち、デジタルの力で現場を変えていくプロジェクトを担っている。
須原さんが所属する「デジタル事業推進グループ」は、炉内の耐火レンガの摩耗を可視化する測定システムの営業・導入支援を担当。日本を代表する大手鉄鋼メーカーの現場にも出向き、国家プロジェクトの電気炉開発にも関わる。測定データの取得から分析、不具合があれば技術者と連携して原因を特定・改善策を提案している。
“できる”より“応える”を選ぶ
就職活動でもともと志望していたのは、語学力を活かして海外を相手にビジネスをする商社の仕事だった。大学入学当初はコロナ禍真っ只中。社会に出る前に自身の“人見知り”な性格を変えたいという思いから、4年時にアメリカ・シアトルに留学。「知らない世界に飛び込むことが、苦手を乗り越える力になる」と実感した経験が、今の姿勢につながっている。
留学の経験は自身の価値観に多大な影響を与えた。培った語学を活かしたいと思っていたが、入社後、その意識は変わった。
「先輩にも同期にも、英語がもっとできる人がたくさんいる。だからこそ、それは“特別な強み”じゃない。自分が何を任されて、どう応えるか。その方がずっと大事だと思うようになりました。」
TMLを選んだ理由も、冷静な視点からだった。一番に魅力を感じたのは、少数精鋭の専門商社であること。「若手に裁量がある」=「若いうちから多くの経験が積める」と入社の決め手になった。
配属されたのは、当時立ち上がったばかりのデジタル事業推進グループ。語学とは無縁のフィールドで、技術や製品知識もゼロからのスタートだった。
「新しく立ち上がった部署だからこそ、前例に縛られずできることばかり。伝統的な業界の変革に貢献できる可能性に、正直ワクワクしました。」
派手な言動はない。でも、言葉の端々にはぶれない意志が宿っている。ひとつひとつの現場で信頼を積み上げながら、須原さんは今、鉄鋼業界の変革の中を歩んでいる。
測定の現場を支える、信頼と即応の力
現場と技術のあいだで磨かれる、“応える力”
須原さんの担当業務は、単なる営業にとどまらない。彼が担当する測定システムは、鉄や鋼を溶かす炉の耐火レンガの摩耗度を三次元的に可視化する機能をもち、現場の安全性や運用効率に直結する領域だ。
高温の炉内に設置された耐火レンガは、時間の経過とともに摩耗していく。従来は作業員の目視や手作業による確認が主流で、損傷の程度を正確に把握するのは難しかった。だがこのシステムでは、レンガの残厚を非接触で精密に測定し、損傷箇所をカラーマップなどで“見える化”できる。事故の予防、保守の最適化、コスト削減。現場からは「目視ではわからなかった損傷が、データで見ると一目瞭然だった」という声も上がっている。
こうした技術が機能する背景には、グループ会社・東京貿易テクノシステム(TTS)との密な連携がある。TTSが測定システムの設計・開発を担い、TMLは営業として鉄鋼業界の現場に深く入り込む。それぞれの強みが重なり合って初めて、現場に使われる技術が形になる。長年の耐火物ビジネスで培ってきた信頼関係と現場理解。TMLだからこそ、技術を“現場の言葉”で伝えられる。
「TTSが組んだシステムを、現場の人に届ける“通訳”のような立ち位置だと思っています。」
TTSの技術者と日常的にやりとりする中で、須原さんはこうも語る。
「普段関わることのない世界に関われることは、すごく勉強になります。」
グループ会社との連携を通じて、異なる専門性や視点に触れながら学び、行動することが、自身の成長にもつながっている。
たとえば不具合が起きたときは、須原さんが現場で状況を確認し、TTSの技術者に正確に伝える。そのやり取りを繰り返す中で、軽微な不具合なら自ら対応できるようにもなった。もともとは「Cドライブって何ですか?」というレベルだったPC知識も、解析ソフトの操作やエラーの切り分けまでこなせるようになった。
国家プロジェクトの最前線に、若手の実行力
日本の大手製鐵会社数社と連携し、水素を活用した次世代電気炉の開発を目指す、国家プロジェクトにもジョイン。少ない電力で鉄を溶解させる試験実験が進むなか、須原さんはお客様と技術者のあいだに立ち、毎週送られてくる膨大な測定データの整理・解析を担当している。異常値やエラーがあれば仮説を立て、TTSとともに改善策を検討する──その積み重ねが、プロジェクトの信頼を支えている。
「誰よりも測定器を触っている自信がある」と語る須原さん。立ち上がったばかりの新規事業で、明確なルールやマニュアルもない中、技術的なキャッチアップには自ら積極的に測定器を何度も触りながら仕様を理解していったという。
ときにはTTSの技術者に頼らず、自分で不具合の原因を突きとめる。「もう私の知らない領域もこなせている」と上司が語るほどに、試行錯誤の中で磨いた実行力が、今の須原さんの武器になっている。
そんな須原さんの仕事ぶりを支えているのが、徹底した“抜け漏れゼロ”の管理術だ。
「言われたことは全部やる。できなければ、すぐに聞く。それだけです。」
依頼や質問はすべてタスクリストに書き出し、一つ残らず潰していく。完了した項目には線を引き、進捗はスケジューラーと照らし合わせて管理。
「その日にやるべきことを、必ずやる」。その愚直な姿勢が、顧客やTSSの技術者、上司など、須原さんの大きな信頼を築いている。
当たり前のその先へ、現場から変えていく
“暑さの現場”に、踏み出す一歩
国家プロジェクトでの経験を通し、須原さんが次に関わるのは、「温度管理」や「熱間測定」といったソリューション。高温環境下での測定負荷や作業者リスクといった課題に応えるTMLの技術として、すでに現場でも注目されている分野だ。
須原さんは、その領域にも関心を広げ、導入や運用支援といった実務を通じて、現場目線での貢献を始めている。
「真夏の製鉄所は本当に暑い。装置が安定しない・作業者が近づけない場所もある。その中でどう測るか、が次のテーマだと感じています。」
TTSとともに、現場が本当に使える測定方法を模索する日々。将来的には、こうした仕組みを全国に展開し、鉄鋼業界の標準にしていく構想も描いている。
「全国の製鉄所で“当たり前に使われている”ような製品に育てていけたら。きっと業界を変える大きな一歩になるはずです。」
実現すれば、高温下の作業リスクを軽減し、測定の属人性も減らせる。誰でも安全かつ安定して使える仕組みが整えば、保守の精度やタイミングも最適化され、突発的なトラブルや余分なコストを抑えることができる。現場から生まれたこの技術が、鉄鋼業界全体の“次の当たり前”になる。その可能性に、須原さんは確かな手応えを感じている。
一人で任せられる営業になるための、確かな歩みを
そのためにも、まずは自分自身の力を磨き続けたい。現在は3人チームの一員として東日本エリアを担当しているが、いずれは提案から保守までを一人で完結できる、「任せられる営業」になることが目標だ。
「現場に行って、話を聞いて、課題を拾って、それをTTSにつなげて……最初から最後まで、自分が責任を持てるようになりたいです。」
一つひとつの現場で信頼を積み重ね、小さなことでも自分の責任で最後までやりきる。 それが、須原さんのやり方だ。
製鉄所という巨大な現場で、「次の当たり前」をつくる技術と信頼は、着実に形になってきている。 須原さんの挑戦は、その一角を確かに切り拓いている。
取材を終えて|グループ広報部より
「やるべきことを、やる。それだけです」。
須原さんのこの言葉には、控えめながらも揺るぎない責任感と実行力がにじんでいました。営業として現場に入り、TTSの技術者と連携し、顧客と向き合いながら、一つひとつの課題に真摯に取り組む姿勢。その積み重ねが、鉄鋼業界の“次の当たり前”を着実に形にしようとしています。
今回の取材を通じて、私たちが強く感じたのは、東京貿易グループが掲げる経営指針の中にある「共創力」——縦・横・斜めの境界を超えて、新たな価値を生み出す力が、現場の最前線で確かに動いているということでした。TMLとTTS、そして顧客との協業。その接点に立つ須原さんの挑戦は、まさにその実践例です。
若手が成長し、組織を越えて価値をつくる。私たち広報部は、こうした挑戦の現場に光をあて、その共創の力を未来へとつなげていきます。
東京貿易グループでは、さまざまなキャリアの機会があります。ぜひ一緒にはたらいてみませんか?お気軽にこちらからお問い合わせください。
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