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東京貿易メカニクス 新社長インタビュー:信頼を重ね、人を信じ、組織を強くする

2026年4月、東京貿易メカニクス(以下 TMX)の代表取締役社長に山廣充孝が就任しました。

新たな体制のもと、TMXはこれからどのような一歩を踏み出していくのか。今回のインタビューでは、新社長としての抱負だけでなく、山廣社長がこれまでの経験の中で培ってきた仕事観、育成観、そして組織への思いを伺いました。

目先の成果ではなく、長い視点で信頼を積み重ねること。人に任せる一方で、決して放っておかないこと。そして、一人ひとりが自分の考えを持ち、周囲のために動ける組織をつくること。飾らない言葉の中ににじむのは、現場で培ってきた仕事観と、人に向き合う厳しくもあたたかなまなざしです。

社長として、そして一人のリーダーとして、山廣社長はTMXのこれからにどう向き合い、何を築こうとしているのか。その率直な言葉をお届けします。

  • PROFILE

    山廣 充孝

    東京貿易メカニクス株式会社 代表取締役 社長執行役員

    東京貿易グループにおいて、エネルギー機械事業を中心に営業・マネジメントに従事。2013年、東京貿易株式会社の分社化に伴い、東京貿易機械株式会社(現・TBグローバルテクノロジーズ株式会社)へ。エネルギー機械事業部 機械国内部長、名古屋営業支店長、サービスソリューション部長、営業統括本部長などを歴任し、国内営業領域を軸に事業推進と組織マネジメントを担う。2026年4月、東京貿易メカニクス株式会社 代表取締役 社長執行役員に就任。

テーマ1:仕事観 ― 目先ではなく、“長い付き合い”を選ぶ

自分を信じてもらったことが、仕事観の原点に

――まずは、東京貿易での歩みについてお聞かせください。

私自身、決して順風満帆なキャリアを歩んできたわけではありません。東京貿易との関わりは、2003年に協力会社の一員として、広島営業所でエネルギー関連の仕事に携わったことが始まりでした。

当時の広島営業所は少人数の体制で、とにかく現場に出て、仕事を覚えていくスタイルでした。競合がいる中でどう案件を取っていくか。お客様のところへ通い、話を聞き、関係を積み重ねていく。そういうことを日々繰り返していました。その中で、「東京貿易の採用試験を受けてみないか」と当時の上司が声をかけてくださったんです。

――仕事ぶりを見て、可能性を見出されたのですね。

当時の上司の推薦をいただき、採用試験を受けましたがSPIの結果があまり芳しくなく、採用見送りかという話が出ていた時に、助け舟を出していただいたのが今のホールディングス社長の坪内さんです。

坪内さんが広島に出張で来られる際に、食事の場などでいろいろと話をする機会がありました。仕事の成果だけではなく、普段のやりとりや人となりも含めて見てくださっていたのでしょう。

 

私自身、決して器用なタイプではありません。それでも、「やってみたらどうか」と可能性を見出してくださった。そして社内でも、「彼の人間性がいい」と後押ししてくださったようで、そのことは自分にとって本当に大きかったです。

もちろん、最初から何かができたわけではありません。だからこそ、任せてもらった以上、逃げるわけにはいかないという思いがありました。お客様のところへ行き、わからないことは聞き、自分なりに考えながら、一つひとつ積み重ねていく。その繰り返しの中で、少しずつ自分の仕事の軸ができていきました。

うまく立ち回ることよりも、相手に対して嘘をつかないこと。目の前の売上だけを考えるのではなく、その先のお付き合いまで考えて向き合うこと。東京貿易に育ててもらい、仕事を任せてもらったからこそ、自分も仕事に対しては正直でありたい。そういう思いは、広島時代の経験の中で形になっていきました。

目先の成果より、長い信頼を積み重ねる

――お客様との関係の中で、その考え方が形になった出来事はありますか?

今も心に残っていることがあります。広島で営業をしていた頃、あるお客様と会食をしている最中に、別のお客様から電話が入ったのです。現在のTBグローバルテクノロジーズ (以下TBG) が扱うスイベルジョイントという製品を購入したいという相談でした。

その時、まず確認したのは「どういう使い方をされるのか」ということでした。東京貿易の製品は決して安くはありませんが、その分、耐久性や信頼性には強みがあります。一方で、用途によっては、より安価でコストを抑えられる他社製品の方が合う場合もあります。

だから私は、お客様に用途を確認したうえで、「長期的に安定的な稼働が求められるラインで使うのであれば信頼性の高い当社の製品をおすすめします。ただ、短期間での交換を前提としていて、価格が優先ならば、他社製品でもよいのではないか」とお伝えしました。

――営業としては、あえて自社製品をすすめない判断だったのですね。

その電話を横で聞いていたお客様からは、「お前、営業なのに何を言っているんだ」と驚かれました。少しでも売りたいと思わないのか、と。

でも、私たちが扱っている製品は、ニッチで特殊なものが多いんです。お客様とのお付き合いも、40年、50年と続いていることが多い。そしてその先も、何十年と関係が続いていくかもしれません。その中で、目先の売上だけを考えて都合のいいことを言い、後になって「あの時、山廣に言われて買ったけれど、実際は違っていた」と思われたら、長い目で見て会社のためにはならない。

だから、自分の成績を優先して売ることはしたくありませんでした。

すると、そのお客様が大笑いして、「お前はバカ正直だけど、そういうところがいい」と言ってくださったんです。それから、その方には本当にかわいがっていただきました。

――その実直さが他の客様の信頼にもつながっていったのですね。

そうだと思います。別のお客様からも、「東京貿易から買うんじゃない。あなたから買うんだ」と言っていただいたことがあります。価格が高いと言われた時にも、「物だけの値段で買っているつもりはない」とおっしゃっていただいたこともありました。今思い返しても、本当に嬉しいことでした。

自分に正直であること。相手に対して誠実であること。目先の成果だけではなく、長い関係の中で信頼を積み重ねていくこと。広島時代のお客様から、今にも繋がる仕事の考え方を教えていただき、私の仕事観の原点になっています。

テーマ2:育成観 ― 任せる。でも、放っておかない

任せる側になって知った、上司としての責任

――マネージャーとして人を育てる立場になったとき、どのようなことを意識されていたのでしょうか。

マネージャーになると、それまでとは見えるものが大きく変わりました。

担当者の頃は、自分で考え、自分で動けばよかった。けれどマネージャーになると、部下に動いてもらい、教え、何かあれば一緒に責任を負わなければなりません。

それは、仕事上の責任だけではありません。部下にはそれぞれの生活があり、家族があり、仕事人生がある。自分の判断や任せ方が、その人の先々にも影響する。そう考えると、人に任せるということを軽く扱ってはいけないと感じるようになりました。

その時に思い出したのが、広島時代の上司の姿でした。

その上司は、細かく手取り足取り教えるというより、まず任せる人でした。ただ、自由にやらせるだけではありません。何かを始める前には、「お前はどうしようと思っているんだ」と必ず聞かれる。自分なりの考えを話すと、「それならやってみろ」と任せてくれる。考えが足りない時には、きちんと指摘される。

任せるというのは、ただ仕事を渡すことではなく、本人に考えさせること。そのことを、その上司から学びました。

自分が上司になってからも、部下にはまず考えさせるようにしてきました。こちらが全部答えを出すのではなく、本人がどう考えているのかを聞き、そのうえで任せる。そこが、自分のマネジメントの原点になっています。

壁を越えた経験が、人を育てる

――人が成長するうえで、どのような経験が大切だと考えていますか。

うまくいった仕事よりも、大きな壁を何とか乗り越えた経験の方が、その人の中に残ると思っています。

仕事をしていれば、思うように進まないことは必ずあります。お客様との間で問題が起きることもある。予定通りにいかないこともある。そういう時に、どう考えるか。誰に相談するか。どう収めるか。その経験を通じて、人は少しずつ強くなっていくのだと思います。

若い時は、どうしても失敗したくないものです。でも、安全なところだけを歩いていると、殻を破る機会も少なくなる。少し背伸びをして、難しい仕事に向き合う。悩む。時には怒られる。それでも乗り越えた時に、次から見える景色が変わるんです。

――任せる側にも覚悟が必要ですね。

そうですね。上司の仕事は、大きく言えば三つだと思っています。

一つは、部下が仕事をしやすい環境を整えること。

二つ目は、判断すべきところで決めること。

そして三つ目は、責任を果たすことです。

部下に任せると言っても、ただ丸投げするのとは違います。本人が考え、挑戦できる環境をつくる。必要な情報や人とのつながりを整える。迷っている時には、最後に判断する。そして、何かあった時には上司としての責任を果たす。

それができないなら、上司が「任せる」と言うべきではないと思います。

人を育てるというのは、単に仕事を覚えさせることではありません。その人が自分で考え、自分の判断で動けるようになること。そのためには、時には厳しく言うこともあります。

ただ、厳しくすることと、突き放すことは違います。

本人にとって何が良いのか。どこで力を発揮できるのか。そこまで見ていくのも、上司の役割だと思っています。

任せる。でも、放っておかない。

自分が上司として大切にしてきたことは、そこに尽きるのかもしれません。

テーマ3:組織観 ― “自分の考え”を持てる組織へ

まずは、意見を交わせる土台をつくる

――社長に就任した今、まずどのようなことから始めようとしているのでしょうか。

社長に就任して、見る範囲は大きく広がりました。

これまではグループ会社であるTBGで国内営業の領域を見てきました。お客様と向き合うこと、営業部門をまとめること、国内の事業をどう伸ばしていくかを考えることが中心でした。

一方、TMXの社長になり、営業だけでなく、工場や管理部門も含めて会社全体を見る立場になりました。やることの基本は大きく変わらないと思っていますが、見るべき範囲は広がりました。

その中でまず感じているのは、TMXには、もともと良い風土があるということです。資格を取得した人を朝礼で紹介したり、社員の取り組みを社内で共有したりする文化がある。チームでまとまって動く、協力し合うという空気もあると感じています。

何かをゼロから変えようというより、まずは今ある良さをきちんと見たいと思っています。

――すでにある良さを見ながら、さらに組織を強くしていくということですね。

はい。せっかくのいい風土は大切にしたい。そのうえで、まず取り組みたいのは、幹部同士がもっと意見を交流できる時間をつくることです。

TMXは、それぞれの部門が独立し、自分たちの役割をしっかり果たしている会社だと感じています。だからこそ、部門を越えてお互いの状況や考えを共有できれば、もっと良いアイデアが出たり、別の部門の良い事例を取り入れたりできるはずです。

たとえば、ある部門でうまくいっている取り組みが、別の部門の課題解決のヒントになることもある。困った時に、部門を越えて助け合えることもあると思います。そのために、幹部メンバーが集まって話す場や、会議の後に少し腹を割って話せるような機会をつくっていきたいと考えています。派手なことをするというより、まずは互いの考えを知り、会社として何を大切にするのかをもっと自由に話し合える土台を整えていきたいですね。

既存事業にも、まだできることがある

――TMXには、どのような可能性があると感じていますか。

新しい事業を次々と立ち上げることだけが、会社を伸ばす方法ではありません。

もちろん、新しいことに挑戦することも大切です。ただ、TMXには、今ある事業の中にも、深掘りできるところが多くあると感じています。少しものの見方を変えたり、これまでのやり方を丁寧に見直したりするだけでも、できることはまだまだあります。

たとえば、お客様から要望を受けて、海外を含めたメーカーの機器をスポットで販売することがあります。そうした対応自体はできている。ただ、その後が一件で終わってしまうこともある。

しかし、そのお客様にニーズがあるなら、同じ業界の別のお客様にも似た課題があり、展開できる可能性もある。そういうことを一つひとつ考え、実行していけば、事業の広がりはまだまだつくれるでしょう。

――今ある仕事の中にも、見方を変えれば広がる余地があるということですね。

TMXが扱っているコンプレッサーやポンプは、いろいろな業界で使われる機器です。特に高圧ガス関連では強みがありますが、その技術や知見は、エネルギー分野だけに閉じるものではありません。産業ガスやケミカルの分野にも広げられるかもしれないし、似た構造のポンプであれば、水処理や食品など、別の分野にも可能性があるかもしれない。

大切なのは、いきなりまったく知らない領域に飛び込むことではなく、自分たちが持っている強みをきちんと見直すこと。その延長線上で、できることを増やしていくことだと思います。そうやって一つひとつ成果が出てくれば、社員の自信にもつながる。足元にある可能性を見逃さず、地に足のついた取り組みを積み重ねていきたいですね。

自分の考えを持ち、周囲のために動ける組織へ

――これからのTMXを、どのような組織にしていきたいと考えていますか。

TB-GRとして、今は研修や教育の仕組みがより整ってきていると感じています。

グループ全体で人を育てていく土台ができていくことは、とても大事なことです。同じグループで働くうえで、共通して大切にしたい考え方や、身につけておくべき力を学ぶ機会がある。それは、組織として大きな強みになると思います。

ただ一方で、全員が同じ考え方になればいいということではありません。

「金太郎飴みたいな社員ばかりになってはいけない」と思うんです。

共通の土台は持ちながらも、一人ひとりが自分の考えを持つこと。自分の言葉で意見を言えること。そのうえで、自分の部署だけでなく、会社や周囲のために何ができるかを考えて動けること。そういう人が増えていくと、組織はもっと強くなると思います。

――共通の土台を持ちながらも、それぞれの個性や考えを活かしていくということですね。

自分のことだけを考えるのではなく、困っている人がいれば助ける。自分の部署だけでなく、会社全体、そしてグループ全体にとって何が良いのかを考える。そういう一つひとつの行動が、組織の空気をつくっていくのだと思います。

社員には、大いにやってほしい。失敗することもあるかもしれません。でも、自分で考え、挑戦して、その経験を自分の力にしていってほしいと思っています。そして、TB-GRで働いてよかったと思ってほしい。世の中からも「あのグループで働いていた人なら」「TB-GRで鍛えられた人なら」と信頼されるような存在であってほしい。

社員一人ひとりがさらに前向きに挑戦し、最後には笑顔になれる――そんな組織を、これからもっと強く育てていきたいと考えています。

取材を終えて|グループ広報部より

今回、TMX社長 山廣さんへのインタビューで強く感じたのは、現場で積み重ねてきた経験の厚みでした。

目先の成果だけを追うのではなく、お客様にとって何が最善かを考え、長い信頼関係を築いていく。その姿勢は、TB-GRの行動指針のひとつである「誠実」そのものです。社会や顧客の課題にまっすぐ向き合い、信頼を得ることで価値を生み出していく。その考え方が、山廣さんの仕事観の根底にあるように感じました。

 

また、人を任せて育てること、部門を越えて意見を交わすこと、一人ひとりが自分の考えを持って動くこと。そこには、「共創力」や「闊達」にも通じる姿勢が見えました。縦・横・斜めの境界を越えて知恵をつなぎ、互いの価値観を尊重しながら対話できる環境をつくること。それは、TMXがこれからさらに強い組織へと進んでいくうえで、大切な土台になるはずです。

大きな変化を一気に打ち出すのではなく、今ある良さを見つめ、対話を重ねながら、足元から組織を強くしていく。その実直な姿勢の先に、TMXの新たな可能性が広がっていくのだと感じます。

新たな体制のもと、TMXがどのように変化していくのか。グループ広報部としても、新たな歩みを追いかけていきたいと思います。

 

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