社員インタビュー:フランスで育ち、日本で働く 次世代エネルギーを見据えた新製品開発への取り組み
東京貿易グループは様々なバッググラウンドを持つ人が働いています。今回ご紹介するのはフランス人のアントゼフスキー ラヂスラスさん。現在TBグローバルテクノロジーズで、主力製品のローディングアームの新製品の研究開発に携わるエンジニアです。
最近では新製品の設計で大きな成果をあげています。
今回はその新製品の研究開発や日本と大学との共同研究から、日本で働くことや職場環境についても詳しくインタビューをしました。
この記事でわかること
・TBGの研究開発の仕事とは
・次世代エネルギー製品への取り組み
・働く場としてのTBGとは
・大学との共同研究の取り組み
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PROFILE
アントゼフスキー ラヂスラス Antoszewski Ladislas
TBグローバルテクノロジーズ株式会社 新商品開発グループ
フランス生まれ。フランスの大学では流体力学を学び、台湾・日本へと留学も経験。大学院修了後は日本の自動車開発メーカーへ就職。車体の設計エンジニアの経験を積んだ後、2022年TBグローバルテクノロジーズに中途入社。新商品開発グループにて研究開発エンジニアとして働く。次世代船舶燃料として注目される日本初*のアンモニア用ローディングアーム向け緊急離脱装置(ERS)高速窒素パージシステムの開発に寄与する。* 自社調べ
目次
・フランス、台湾、日本。3つの国で学んだ自分の礎
・人々の暮らしを支え、次世代エネルギーへ歩みを進める
・日本に身を置き、地球の未来に貢献できる製品を
・コラム|日本の中でも好きな場所
・取材を終えて|広報部より
フランス、台湾、日本。3つの国で学んだ自分の礎
生まれから大学時代までフランスで育つ
私は生まれも育ちもフランス。大学時代までパリに近い街で暮らしました。フランスの大学へ進学し、専攻は「流体力学」。流体力学とは、液体や気体がどう動くのかを研究する学問です。
重い飛行機が空を飛ぶ原理、大きな船が水に浮かぶ原理…。それを理解し、スーパーコンピューターで解析して、様々な領域に応用するのが流体力学。難しい学問ですが、学べば学ぶほど奥深くおもしろい分野です。
台湾と日本への留学の経験
大学生活の中で、2つの国への留学を経験しました。まず台湾の大学で半年間の留学をしました。そして、日本へ留学し、東北大学の流体力学研究所で学びました。研究室では、宇宙ドローンの開発に参加し、主に火星用ドローンのプロペラ設計に携わりました。
日本で研究を重ねた日々はとても濃密で、自分自身が研究者としてどうあるべきか、大きな影響を受けました。日本の研究室は、フランスよりも研究対象の自由度があり、学生自身が何を研究するのかを自由に選ぶことができます。
また、日本人研究者の姿勢にも感銘を受けました。それは「細かいディテールにまでこだわる姿勢」です。細部にも緻密に目を配り、明確にしていくからこそ、生み出せる成果がある。これは今までの自分になかった姿勢ですが、研究者として成果を出す上で欠かせないことだと実感し、その後の自分の研究姿勢にも根付いています。
新卒で自動車の設計、そして東京貿易へ
フランスの大学院を修了後は、日本の自動車開発メーカーへ。留学生時代に日本で過ごし、日本で暮らしたいという思いが大きかったのも日本の企業を選んだ理由のひとつです。
就いたのはボディ設計。車のボディは風の抵抗を受けるため、流体力学での学びが活きるのです。見た目の魅力を最大限引き出すデザイナーと、車としての性能を最大限引き出したいエンジニア。その間で、ボディを設計するのが私の仕事です。両者の意見を参考にしつつ、最適な設計とは何かを模索し形にしていきました。
仕事自体はとても充実していましたが、アメリカやヨーロッパなどへの長期出張が非常に多く、様々な国へ飛び回る日々でした。その中で「じっくりと日本で暮らして働きたい」という思いが強くなっていきました。
そんな時に出会ったのが、今私が所属するTBグローバルテクノロジーズ (以下TBG)です。主力製品は「ローディングアーム」。タンカー船で運ばれてきたLNGや原油などの資源燃料を、陸上のプラントに移すための装置です。資源燃料を安全な状態で運ぶため、高い技術力・精度が求められます。
中でもLNG用ローディングアームは国内シェアほぼ100%を誇ります。圧倒的なシェアとそれを支える高い技術力を持つこと。そして、これまで私が積み重ねてきた「流体力学」の知識が大きく役立つことに魅力を感じ、転職を決意しました。
人々の暮らしを支え、次世代エネルギーへ歩みを進める
顧客の期待に応えるためのローディングアームの新部品
私は現在研究開発エンジニアとして、ローディングアームの新商品に携わっています。ローディングアームは特殊な製品であるがゆえに、基本的に顧客の要望にあわせ、ひとつひとつオーダーメイドで作られます。そのため現在は、大部分の部品を1から作る必要があります。新商品の完成までには、多大な時間とコストもかかる製品です。
例えば、日本では火力発電の燃料や家庭で使用されるガスに使われるLNGは、保管のために-162℃まで冷やし液化させ、低い温度のまま運ぶ必要があります。こういったものを扱うローディングアームは、運ぶ燃料の性質や特性に合わせて、部品の素材となる金属の種類や加工を変え、作り上げていく製品です。様々な条件下で仮説と検証の繰り返しを経て、新製品は生み出されます。
これに対し、今取り組んでいるのは、「汎用性のある部品」の開発です。それぞれの製品にあわせて部品をゼロから作るのではなく、様々なローディングアームで使える標準部品を開発しています。これが実現すれば、コストを下げながらも製品の完成までのリードタイムを短縮することができ、顧客の期待により応えることができます。そのインパクトは大きいものになるでしょう。
地球温暖化対策につながる、次世代エネルギーの新製品開発に成功
さらに今、力を注いでいるのが、次世代燃料として期待されるアンモニアに関わる新製品です。アンモニアはCO₂を排出しない燃料。地球温暖化対策のための次世代燃料として大変注目されています。ただし、万が一漏れると海の水質や大気に悪影響を及ぼす危険性もあります。高い安全性は当然のこと、機能面・コスト面とも、求められるクオリティを満たす製品を生み出すことが求められます。
様々な試行錯誤を繰り返す中で、ひとつの大きな成果となったことがあります。
2023年、TBGはアンモニア用ローディングアーム向け緊急離脱装置(ERS)高速窒素パージシステムの開発に日本で初めて*成功しました。* 自社調べ
アンモニアサプライチェーン構築に欠かせないのが、ERSという緊急離脱装置です。万一突風・潮流によってタンカーが急激に移動したり津波や火災などの不測の事態が発生しても、数秒間という短時間で、人体に強い毒性を持つアンモニアを大気中に拡散させることなく、ローディングアームとタンカーを安全に切り離すことができる装置です。
現在特許申請中となりますが、長岡工場に関係者を招待し、この技術のデモンストレーションを実施。TBGがLNGローディングアームで50年にわたり蓄積してきた技術が、アンモニア燃料のサプチェーン構築にも大きく活用貢献できることが実証されました。
私たちがつくるのは、エネルギーを安心安全に移送するという、人々の毎日の暮らしに欠かせない製品です。さらに、次世代燃料を移送する製品の実現を通じて、地球温暖化など環境課題の解決に大きく寄与することができます。地球の未来に関わる製品を生み出していくということに、大きなやりがいを感じています。
日本に身を置き、地球の未来に貢献できる製品を
働く環境としてのTBG
この先、どこに身を置きたいですか?と聞かれたら、私は日本と答えます。
東京の便利さ、様々な地域の美しい自然や文化、食事の美味しさ…日本の好きなところを挙げるとキリがありません。仕事をしていく上では、「毎日の生活の心地よさ」はとても重要で、日本での暮らしにはそれがあります。
そして、仕事に取り組む上での環境も、私の価値観にとてもマッチしています。
TBGには、自由な発想を受け入れ、個人の能力を活かす考えが根付いています。東京のオフィスでも、私以外にもフランス人や、イタリア、中国といった国籍を持つ同僚がいて、それぞれが活躍しています。
私の業務は長岡工場とやりとりすることも多いですが、相談を投げかけるとすぐに応え、開発に協力してくれるという恵まれた環境です。
毎日心地よく暮らし、周囲と協力しあえる環境だからこそ、自分の考えや発想を活かしよりよい製品を生み出し続けることができるのだと思います。
日本の大学との共同研究から生まれる未来
今後、より力を入れていきたいのは、大学との共同研究です。現在も自分が在籍した東北大学 流体科学研究所とアンモニア関連で共同研究を行っていますが、このような取り組みを増やしていきたいと考えています。
企業の研究開発ならではの良さもありますが、大学の研究機関だからこそできることも数多くあります。大学は、設備面や技術面はもちろん、幅広い連携から得られる先端技術や最新の情報も集まる中で研究に集中することができます。
共同研究を重ね、それぞれの利点が掛け合わされば、エネルギーの未来を大きく変えるよりよい製品の開発につながっていくはずです。
企業と大学の架け橋として私自身を活かし、未来を明るくする製品を生み出していくこと。それが、働く場として日本を選んだ私の大きな目標です。
取材を終えて|広報部より
今回はTBGで研究開発エンジニアとして活躍するラヂスラスさんにお話をお聞きしました。
ローディングアームの品質向上から、次世代エネルギーとして注目されるアンモニアに関わる新製品まで、最前線で研究開発に携わるラヂスラスさんのお話はとても興味深いものでした。大学との共同研究の機会も増やしたいということですが、ここからどんな技術や製品が生まれていくのか、とても楽しみです。
日本を愛し、日本を基盤に働きたいという言葉もとても嬉しく思いました。
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Recruit 募集要項|東京貿易グループ / TOKYO BOEKI GROUP (tokyo-boeki.co.jp)
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